イギリス系インターのIGCSEメモ
(この記事は僕の知識が増える度にリライトしている、現在進行系の記事です)
はじめに
この記事はイギリス式カリキュラムを取り入れている学校、インターナショナルスクールに行く生徒さん、またはその保護者向けに書いています。できるだけリサーチした上で書いていますが、何分筆者の僕もまだまだ勉強中なので、間違いや誤解などがあるかもしれません。その場合はメールやTwitterDMなどでご指摘いただけると幸いです。
この情報が、少しでも多くの、イギリス式カリキュラムに挑戦している日本人の役に立つことを願っています。
とりあえず、ゴールはIGCSE
イギリス式教育では、とにかく重要なのは
GCSE、IGCSE (International General Certificate of Secondary Education)。
これで良い点が取れればとりあえずOKという世界。もちろん細かい話をすれば、IGCSEの次の段階の「A-level」を取らないといけない、などあるが、大学に進学するための最低条件という意味で、まず押さえるべきはこのIGCSE。なぜならイギリス式カリキュラムの受講者全員が通る道だから。ここが終われば、他のカリキュラムに移動したり、次のステップに進んだりもできる。
日本語では「一般中等教育修了試験」と訳されるが、ここでいう「中等教育」というのは日本の中学校の年齢とは少し異なる。イギリス式の学齢ではG10~G11(15~16歳)がこれにあたり、日本では大体高校1~2年生の年齢にあたる。

基礎知識
さて、まず大まかなゴールを提示したところで、カリキュラムの基礎知識について振り返る。イギリス式カリキュラムの学校を選んだ人なら知っていて当然、という内容かもしれないが、ここでおさらい。(何を隠そう僕自身が当初全然理解できていなかった…)
イギリスの学校制度
- 日本では学習指導要領に基づいて教育が行われるが、英国では「ナショナルカリキュラム(National curriculum)」に基づいて行われる
- ナショナルカリキュラムは、年齢別に「Key Stage(KS 1~4)」という4グループからなるブロックで編成され、教科の内容や達成目標が示される。プライマリーとセカンダリーで学習する教科や基準を定めており、子供たちは皆同じ内容を学ぶことになる
- KS2とKS3の最後には「Checkpoint」というテストがあり、子供たちの達成状況を教師が公式に評価する。
- イギリスの教育制度は5段階。年度の始まりは9月。つまり9月1日生まれの児童がその学年で最年長となり、8月31日生まれが最年少。
- Pre-school (プリ・スクール=就学前教育)
- Primary Education (プライマリー・エデュケーション=初等教育)
- Secondary Education (セカンダリー・エデュケーション=中等教育)
- Further Education (ファーザー・エデュケーション=継続教育)
- Higher Education (ハイヤー・エデュケーション=高等教育)
KEY STAGE
Key Stageという勉強の段階があり、セカンダリーまではこのKey Stageに沿って学習を行う。
- Key Stage 1 (キーステージ1) :5歳から7歳までの児童=Year 1,2(First School/Infant School:ファースト/インファント スクール)⇒初等教育
- Key Stage 2 (キーステージ2) :7歳から11歳までの児童=Year 3,4,5,6(Middle School/Junior School:ミドル/ジュニア スクール)⇒初等教育
- Key Stage 3 (キーステージ3) :11歳から14歳までの生徒=Year 7,8,9(Secondary School:セカンダリー:スクール)⇒中等教育
- Key Stage 4 (キーステージ4) :14歳から16歳までの生徒=Year 10,11(Secondary School:セカンダリースクール)⇒中等教育
IGCSE
そしてゴールであるIGCSE。これは「International General Certificate for Secondary Education」の略。Oレベルとも呼ばれることもある。
もともとイギリス本国で行われているテストは「GCSE」だが、これに「International」が付き、海外でも通用する国際的なテスト基準となっている。GCSEと同等、と言われているが、実際には難易度に差があるらしい…!?ここは現在リサーチ中。
開始時期はYear 10から。Year 10,11(日本で言うと中学3年生~高校一年生)を通して授業を受け、Year 11の終わりに最終試験を受ける。
テストの実施時期は年に2回、10~11月と5~6月に行われる。
IGCSE前にやること
基礎がわかったところで、IGCSE対策の説明に移る。
IGCSE、いろいろな科目がある中で特に重要視されているのはMathematicsとScience (Physics, Biology, Chemistry)。もちろん希望する大学によって必須条件は違うので、志望学部の条件を確認する必要はある。しかし、この「数学」と「理科」を抑えていると、選択肢の幅がとても広くなる。
そしてこれらの教科、はご存知の通り、積み重ねが必須な科目。なので、いきなり「G10から本気出す」では通用しない。当然G7~G9のSecondaryから準備が必要。この、前段階の準備学習がしっかりしていれば、IGCSEにスムーズに入ることができる。
Checkpointとは
ここで学校側としても生徒がきちんと準備ができているかどうかを確認したいため、一斉テストが行われる。イギリス式教育ではG6とG9の最後のtermに「Checkpoint」というテストがあり、これで勉強の学習習熟度を測る。
これは記録に残るものではないので大学受験的に重要なものではないのだが、ここでやる内容はほとんどIGCSEのベースのなる知識なので、要はCheckpointで満点取れればIGCSE準備対策はバッチリというわけだ。
Checkpoint対策の全体像
では、どうやったら効率的にcheckpointテストの対策ができるのか?ということだが、うちでは有名な教科書を使うことにした。こちらがそのシリーズなのだが
- Course Book (教科書)
- practice book, workbook (問題集)
- teacher's resourse(先生用の補助教材、教科書と問題集の回答)
全体の構成はこんな感じ。
- Secondary G7~G9(Secondary全体の確認がCheckpoint test)
- Grade 7(各学年の確認がprogression test)
- Unit 1 (各ユニットの確認がunit test)
- Chapter 1 (各チャプターの確認がworkbookの内容)
- Chapter 2…
- Unit 2
- Chapter 1
- Chapter 2…
- Grade 8
- Unit 1
- Chapter 1
- Chapter 2 …
- Unit 2
- Chapter 1
- Chapter 2…
学校が使っている教科書とこのCheckpoint用教科書とでは、手を付ける順番が違うが、それでも概ねやることは変わらない(少なくともうちのインターの場合)。
全体像がわかったところで、次にこれらの教材をどうやって活用していくか、という話。流れとしては以下。
- 1. Coursebook
- Course bookの各チャプターごとに読む(1-1、1-2というように)
- 2. Youtube
- そのチャプターについて説明しているYoutube動画を見る
- ついでにYoutubeで関連動画を見る(あれば、記憶の定着に効果的)
- 3. Keyword
- 重要なキーワードの意味を覚えているか確認する(Coursebookでboldになっている箇所)
- 4. Workbook
- そのチャプターのworkbookをやる(チャプターの復習)
- 5. Unit test
- すべてのチャプターが終わったら、Coursebookの各Unitの最後にあるUnit testをやる(Unitの復習)
- 6. Progression test
- すべてのUnitが終わったら、Progression testの過去問をたくさんやる(学年の総復習)
- 7. Checkpoint
- すべての学年が終わったら、Checkpointの過去問をたくさんやる(G7-G9の3学年分の総復習)
普段は1~5をぐるぐるやる感じ。まだ実施して間もないので結果はわからないが、調べた限りではこういう構成になっているのでとりあえずこれらをやっておけば完璧じゃないか、というプランを立てた。
うちの長女がG9で、すぐにCheckpointがあるのでまずはそこで様子を見てみる。次女は今G7なので、今はじっくり準備をしている。
Checkpoint対策、具体的な準備
さて、上記プランを実施するにあたって準備するものがいくつかあるので一つずつ説明していく。
教科書類
教科書、参考書はCourse book、Work book(Practice book)と呼ばれるものだが、これが僕が住むマレーシアでは正規版の本がなかなか手に入りにくい。学年によっては本屋、オンラインストアどこにも置いて無くわざわざイギリスのオンラインストアから取り寄せたものもあるほどだ。
まあ、とはいっても今の時代本程度のものを送付するのはそんなに送料もかからないので、普通にオーダーして普通に届くし、値段もマレーシア国内で購入するのとほとんど変わらない。
この教科書入手に関しては、そんなことよりもその「作り」が問題なのだ。
教科書にあたるCoursebook、これがRM120程度、約3,000円そして問題集にあたるWorkbook、これがRM50程度、約1,300円。
これはまあ理解できる。しかし気になるのが「Teacher's resource」、これは先生の授業補助教材といったものなのだが、これがなんとRM300、約7,700円もする!
先生の補助教材は要らないじゃない?と多くの人が思うだろう、しかしこの教科書と問題集、それぞれその単体には問題の解答がついておらず、「Teacher's resource」を買わないと解答がわからない仕組みになっている!
授業で使うことを想定されているからこういう構造なのかもしれないが…それにしても問題集を買ってそれに答えが付いてないのは不親切すぎる。問題の解答を見るためだけに8000円程度の金を払うというのは流石に抵抗がある…
しかもこれ、1教科、1学年分だけの話なので、もしもMathsやEnglishなど他教科を見るならその分買わないといけないし、G7~G9と3学年あるので、それぞれ買わないといけない!さすがにつらい!!
いろいろ探し回り、聞きまわったところ、友人がこの先生向け教科書を持っていたので、それをお借りすることになった。教科書や問題集は紙の本であると便利なのできちんと購入して重宝しているが、解答はさすがに…
Youtube
続いてYoutube動画。
今の時代本当にすごくて、Youtube検索で、「Unit名」ですると大体その学習内容に関連した説明動画が出てくる。動画も作り込まれているものが多く、正直学校のクラスで先生が黒板使って説明するよりも全然わかりやすい、学習効果が高い。
科学の実験に関しては、これはリアル授業でないとできないのでリアル授業が意味がないとは言わないが、基礎知識は動画で学んで、学校では「体験型」の教育を重視する、という教育が効率良いと思う。
以下は僕がまとめた動画の目次リンク。学年ごと、教科ごとに分けてそれぞれ個別記事にしている。
https://katarue.com/2020/10/useful-youtube-links-corresponding-to-the-cambridge-checkpoint-coursebook-science/
(英語ユーザーが読むことも想定しているので、こちらの記事は英語のみ表記となっています)
うちの娘達用に作ったものの、きっと少数の誰かにとって役に立つ情報でもあると思うのでシェアする。結構検索に時間をかけて、内容を確認しながら作ったリストだからそれなりに精度は高いはず。
記事にはキーワードも載せていて、このキーワードの意味を自分で説明できるようになっていれば、理解ができているか確認できる。キーワードの意味はCoursebookの最後のページにリストになっている。
Workbook
workbookはコピーして、紙に印刷してやらせる。うちは長女と次女、二人同時に自宅学習をしているのでこのようにしている。
Unit testも同様で、Coursebookの各Unitの最後にあるUnit testをスキャンしてコピー、それを二人にやらせるようにしている。まあUnit testはtestと言いつつも結構簡易的なものなので、しっかり復習したい場合は「Teacher's resource」に入っている「Worksheet」なんかも併用してもいいかもしれない。
各種test
すべてのUnit、つまり学年でカバーする内容がすべて終わったら、Progression testという学年テストのようなものの過去問をやる。
これは、実際に現地の学生さんから話を聞くと、
「過去問がネットコミュニティなどにたくさんアップされているのでそれをダウンロードする」
とのこと。著作権的なものが気になるが、マレーシアの学生の間ではかなり一般的に行われていることらしい。学生街の印刷屋さんに行くと、低価格で膨大な量の過去問のコピーを売ってくれるのだそうだ。
progression test
学年総復習テスト。
SAT
Standard Attainment Tests (SATs)の略で、2003年から2008年までKey Stage 3を対象に実施された。今はKS1~2のみとなっている。ただ、当時の過去問は復習をするには良い教材とされているので、最近の過去問が終わったらこちらも併せて試すと良い。
Checkpoint
Grade 7からGrade 9までの3年間分の理解度を総チェックするテスト。要点だけ箇条書きでまとめる。
- イギリス式インターナショナルスクールには、「チェックポイント」(CheckPoint)という試験がYear6とYear9にある
- Primary(小学部)、Secondary(中学部)で学ぶべき内容がどれほど理解できているかを確認するテストモック(Mock)という模試と、アクチュアル(Actual)という本番の試験の2種類があり、通常は模試も本番も両方受けることがほとんど(中には、模試で良い点を取った生徒だけ本番が受けられる、という学校もあるよう)
- 模試は学年で一斉に行わず、1週間かけてクラス別に順番に行う学校もあるので、試験内容がダダ漏れな場合も
- 試験は1教科につき、Paper1とPaper2に分かれている試験時間は英語と数学はどちらもそれぞれ70分
- 英語 - 70分。Paper1は説明文を解く問題、Paper2は物語文を解く問題
- 数学 - 70分。Paper1は自分で計算する問題、Paper2は計算機持ち込み可能で、解き方を考える問題
- 理科 - それぞれ45分。総合的に化学と物理と生物が混ざった問題
- 結果は試験後、2ヶ月ほど経つと学校から通達
- このチェックポイント、受けても受けなくてもこれからの将来の何にも影響を与えないので受けないという選択をする生徒もいる
- 学歴として残るのは、Year10と11に受験するIGCSEと、その2年後に受験するA-Levelというイギリスの大学へ進学するための試験
結局は親の責任
ここまで読んで、
「なんで高い学費払ってて、さらに親がここまで動かなきゃいけないの!?」
と思われる方もいるかもしれない。わかる。僕もそう思う。
しかし、これは「落ちこぼれを出さない、みんな一緒の日本の教育」とは違う学習方針だから、ということで諦めている。子供の個性や自由度を尊重すればするほど個々の成長率は変わり、それを先生が個別にトラッキングするのは難しくなる。こういうのをシステムで上手くやっているところもあると聞くが、うちのインターの場合はそこまで完璧ではない。
うちのインターでは、先生は子供の学校でのアクティビティーの様子はしょっちゅう伝えてくるものの、テストの成績はあまり伝えてこない。先生との面談でも
「すばらしいお子さんです!」
とベタ褒めしてくれるのは悪い気はしないのだが、でも"褒める教育"の弊害(笑?)で全然授業の成績について言及してこない。
まあもっとも生徒のレベル差も激しいので、日本のような「平均値」の幅がそもそも広すぎてアドバイスしづらいというのもあるのかもしれないが。
とにかくインターは自己責任の世界。学校任せでは不安が残るので、ここは親がしっかりと子供の習熟度を確認しておく必要がある。
日本の教育システムとかなり異なるイギリス式カリキュラム、まだまだ戸惑うことばかりだが、一緒に乗り越えていこう。